SC業界とは?ショッピングセンターの仕組み・仕事・市場動向を解説
SC業界とは?ショッピングセンターの仕組み・仕事・市場動向をわかりやすく解説
「SC業界とは、どんな業界なのか」「ショッピングセンターは誰がつくり、誰が運営しているのか」。就職や転職で商業施設の仕事に関心を持った方や、出店を考えている企業のご担当者から、こうした質問をいただくことがよくあります。
SCは身近な存在ですが、その裏側にある仕組みは意外と知られていません。デベロッパー、運営会社、テナント、リーシング、PM。関わるプレイヤーが多く、それぞれの立場や収益の考え方も異なります。
本記事では、SC(ショッピングセンター)の定義から、業界の構造、主な施設タイプ、市場規模と最近の動向、SC業界の仕事内容とキャリア、今後の課題までを整理して解説します。市場の数値は、日本ショッピングセンター協会が公表している統計をもとにしています。
執筆は、商業施設運営会社・鉄道会社・アセットマネジメント会社の現場でリーシングや運営に携わってきた、株式会社ロメッツ(REMAX COMPASS)代表の向井瑛一郎の実務経験にもとづいています。
SC(ショッピングセンター)の定義
まずは「SCとは何か」から確認します。業界の統計や議論は、すべてこの定義が出発点になっているためです。
日本ショッピングセンター協会の定義
日本のSCの統計や基準をまとめているのは、日本ショッピングセンター協会(以下、SC協会)です。協会は「SC取扱基準」を設け、どの施設をSCとして数えるかを定めています。
その考え方の骨格は、ひとつの単位として計画・開発され、所有・管理運営される、商業・サービス施設の集合体である、という点にあります。単に店が何軒か並んでいるだけではなく、全体として一体的に計画され、一体的に運営されていることが前提です。
なお、施設の面積や店舗数などの具体的な数値基準は協会が定めており、改定されることもあります。本記事では細かな数値基準には立ち入りません。正確な要件を確認したい場合は、SC協会の公式サイトで最新の取扱基準をご覧ください。
商店街や単独の大型店との違い
SCの特徴は「一体的な計画と運営」にあります。商店街は、個々の店主がそれぞれ独立して営業する集まりです。単独の大型店は、ひとつの企業がひとつの店舗を運営します。
これに対してSCは、デベロッパー(開発・所有者)が施設全体のコンセプトを描き、そこに合うテナントを選び、販促やイベントも含めて施設全体で集客します。テナント同士が互いに集客し合い、全体として施設の価値をつくる仕組みです。この「テナントを組み合わせて魅力を設計する」という発想が、後述するリーシングという仕事の核心でもあります。
SC業界の構造:誰が関わっているのか
SC業界は、複数の立場のプレイヤーが役割分担しながら一つの施設をつくり、動かしている業界です。ここでは主な4つの立場を整理します。
デベロッパー(開発・所有)
土地を取得し、施設を企画・開発し、多くの場合は所有してテナントから賃料を得る立場です。総合不動産会社、鉄道会社、小売企業系のデベロッパーなど、さまざまな出自の企業がいます。施設のコンセプト、規模、投資判断など、方向性を決める役割を担います。
PM(プロパティマネジメント)と運営会社
開業後の日常運営を担う立場です。賃料の収受、テナント対応、設備や清掃の管理、販促やイベントの企画運営などが含まれます。デベロッパー自身が運営を担う場合もあれば、グループの運営会社やPM会社に委ねる場合もあります。
テナント(出店企業)
施設の区画を借りて店舗を運営する企業です。ファッション、飲食、雑貨、サービス、食品、専門店など、業種は多岐にわたります。テナントは施設の集客力を借りられる一方で、賃料や共益費、販促費などを負担します。施設の魅力はテナントの質で決まるため、デベロッパーとテナントは対等なパートナーとして向き合う関係にあります。
リーシング(テナント誘致)
施設のコンセプトに合うテナントを探し、条件を調整し、契約まで導く仕事です。新規開業時の誘致だけでなく、開業後の退店に伴う区画の入れ替えやリニューアルでも、継続的に発生します。リーシングの詳しい流れは、商業施設のリーシングとは?テナント誘致の流れと会社の選び方で解説しています。
このほか、投資家の立場で資産全体の運用方針を決めるAM(アセットマネジメント)が関わる施設もあります。AM、PM、リーシングの役割分担は、施設の所有形態によって変わります。
デベロッパーとテナントの関係
SC業界を理解するうえで欠かせないのが、デベロッパーとテナントの関係です。「貸す側」と「借りる側」という単純な構図に見えますが、実際にはお互いの成功が相手の成功に直結する、利害が重なり合う関係です。
賃料の仕組みと契約の特徴
SCの賃料は、オフィスビルと比べて、テナントの売上と連動する部分があるのが特徴のひとつです。契約の内容は施設やテナントによって異なりますが、一般には、固定の賃料に加えて売上の一定割合を支払う形式(歩合賃料)が組み込まれることがあります。
この仕組みでは、テナントの売上が伸びればデベロッパーの収入も増えます。つまり両者は「施設全体の売上を伸ばす」という共通の目標を持つことになります。運営形態や契約の違いについては、SC運営の契約構造を解説した動画記事も参考にしてください。
両者の関心はどこで一致し、どこでぶつかるか
デベロッパーは、施設全体の魅力と収益を最大化したいと考えます。そのため、区画ごとの賃料だけでなく、フロア全体のバランスや話題性、集客への貢献も重視します。
一方テナントは、自社店舗の採算を第一に考えます。賃料負担、内装費の回収期間、営業時間や休館日のルール、販促費の負担などが、出店判断の重要な要素です。
たとえば、デベロッパーは「話題性のある新業態を入れたい」と考え、テナントは「まずは小さく試したい」と考える場面があります。こうしたときに有効なのが、条件の工夫や柔軟な選択肢です。両者の事情を理解している人が間に入ると、合意点が見つかりやすくなります。
SCの主な施設タイプ
ひとことでSCといっても、立地や商圏、客層によって性格は大きく異なります。代表的なタイプを整理します。
| タイプ | 特徴 |
|---|---|
| 駅ビル・駅直結型 | 鉄道の駅に直結または隣接し、通勤・通学の動線上で日常的な利用が多い。鉄道会社系のデベロッパーが手がけることが多く、駅の利用者数が集客の基盤になる |
| 郊外型SC | 自動車でのアクセスを前提とし、広い駐車場を備える。ファミリー層の来館が多く、食品、日用品、ファッション、飲食、シネマなどを幅広く揃えた、一日過ごせる構成が多い |
| アウトレット | ブランド品を中心に、通常より手頃な価格で販売する。観光や遠出を兼ねた目的来店が中心で、商圏が広い |
| 都市型SC | 都心や繁華街に立地し、ファッションや飲食など感度の高いテナントを集める。国内外からの来街者を意識した構成も見られる |
| 地域密着型SC | 食品スーパーなどを核に、徒歩や自転車圏の生活者の日常利用に応える。生活利便性が最優先される |
施設タイプが違えば、求められるテナントも、リーシングの考え方も変わります。たとえば駅ビルでは、通勤客の「帰りがけの利便性」が重視され、郊外型SCでは、家族で滞在する時間をいかに設計するかが重要になります。
近年は、タイプの境目があいまいになりつつあります。飲食やサービス、体験型のテナントを増やし、「買い物をする場所」から「時間を過ごす場所」へと役割を広げる動きが、多くの施設で見られます。
SC業界の市場規模と最近の動向
SC業界は、どの程度の規模で、どのような方向に動いているのでしょうか。日本ショッピングセンター協会の統計から、確認できる数値を整理します。
SC総売上高は統計開始以来の最高
日本ショッピングセンター協会によると、2025年のSC総売上高は33兆1,238億円で、前年比2.7%増となり、統計開始以来の最高額となりました。2024年は32兆1,254億円で、前年比4.2%増でした。
| 2024年 | SC総売上高 32兆1,254億円(前年比4.2%増) |
|---|---|
| 2025年 | SC総売上高 33兆1,238億円(前年比2.7%増)、統計開始以来最高 |
(出典:日本ショッピングセンター協会)
売上高が過去最高を更新している一方で、後述するようにSCの数そのものは減少しています。つまり、市場全体が拡大しているというより、力のある施設に売上が集まり、施設ごとの差が広がっている構造が読み取れます。
SCの総数は減少、新規オープンも少ない
同じく日本ショッピングセンター協会によると、2025年末時点のSC総数は3,013で、7年連続の減少となりました。また、2025年の新規オープンは18施設で、統計開始以来最少でした。
新しくつくられるSCが少なく、老朽化した施設や採算の厳しい施設の閉鎖が進めば、総数は減ります。売上が好調でも施設数が減っているのは、業界が「新しくつくる時代」から「既存施設をどう磨くか」という時代へ移っていることを示していると考えられます。
(出典:日本ショッピングセンター協会。なお、統計の基準は見直されており、年によって集計基準が異なる点には留意が必要です。)
売上上位の施設を知りたい方へ
個別の施設の売上規模については、当サイトで業界紙の調査をもとにした記事を公開しています。施設ごとの規模感を知りたい方は、2024年度のSC売上高ランキングと2025年のSC売上ランキングをあわせてご覧ください。
SC業界の仕事内容とキャリア
SC業界で働く、といっても、会社によって仕事は大きく異なります。ここでは、立場別に主な仕事を整理します。
デベロッパー・運営会社の仕事
デベロッパーや運営会社には、次のような職種があります。
- リーシング:テナントの誘致、条件交渉、契約。新規開業やリニューアルの要となる仕事
- 開発・企画:新規施設の企画、事業計画、設計や工事の管理
- 施設運営(PM):テナント対応、売上の把握、販促やイベント運営、設備や清掃の管理
- 営業企画・販促:集客のための企画、広告、イベント、デジタル施策
- アセットマネジメント:投資家やオーナーの立場での収支管理、リニューアルや売却の判断
テナント企業の仕事
テナントの側にも、SCと密接に関わる仕事があります。出店先を探し、条件を交渉する店舗開発(出店戦略)、店舗の運営、販売やマーケティングなどです。出店先の選び方は、店舗開発とは?仕事内容・出店の流れ・成功のポイントで解説しています。
どんな人に向いているか、キャリアの広がり
SCの仕事は、街や暮らしに関わる実感を得やすく、数字(売上・賃料)と人(テナント・来館者)の両方に向き合う点が特徴です。経営者や店舗責任者と直接話す機会が多く、提案力や調整力が身につきます。
キャリアの形はさまざまです。デベロッパーで開発、リーシング、運営を経験する人もいれば、鉄道会社や運営会社から、アセットマネジメント会社へと活躍の場を広げる人もいます。また、リーシングや運営の経験は、テナント企業の店舗開発や、不動産仲介の仕事にも活きます。貸主とテナントの双方の事情を理解できることは、この業界で長く評価される強みです。
具体的な仕事のイメージは、SC業界の仕事とキャリアを紹介した動画記事でも紹介しています。ぜひ参考にしてください。
SC業界のこれからの課題
売上高が過去最高を更新する一方で、SC業界は構造的な課題も抱えています。主なものを挙げます。
建設費の高騰
新規開発や大規模改修では、建設費の上昇が事業計画に重くのしかかります。投資を回収するための賃料水準とテナントの採算との折り合いが難しくなり、新規オープンが少ない背景のひとつにもなっていると考えられます。
既存施設の再生
新しく開発する余地が限られるなか、既存施設をどう再生するかが大きなテーマです。ゾーニングの見直し、飲食やサービスの比率の調整、共用部の改装、体験型のテナントの導入などが、各地で進められています。施設の魅力を保つには、定期的な入れ替えと、時代に合ったテナントミックスの更新が欠かせません。
テナント離脱への備え
キーテナントや主要テナントが撤退すると、その区画だけでなく施設全体の集客にも影響します。退店の兆しを早期につかむ、後継テナントの候補を日頃から確保しておく、といった備えが重要です。日常的なテナントとの対話が、結果として退店を防ぎ、万一のときの動きの速さにもつながります。
人材と担い手の確保
テナントの店舗スタッフに加えて、施設運営やリーシングを担う人材の確保も課題です。経験者が持つ現場の知見をどのように引き継ぎ、広げていくかが問われています。
YouTube「SCチャンネル」でもSC業界を発信しています
REMAX COMPASSでは、SC&パートナーズの西山氏と共同で、YouTube「SCチャンネル」を運営しています。SC業界のニュースや動向、施設の取材、仕事やキャリアの話題などを、実務を知る立場から発信しています。
文章だけではイメージしにくい施設の違いや、業界の空気感を知りたい方は、SCチャンネルの記事一覧もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. SC業界とは、具体的にどんな業界ですか?
A. ショッピングセンターを開発・所有・運営し、そこに出店するテナントを誘致・管理する、一連の事業に関わる業界です。デベロッパー、運営会社、PM、リーシング、テナント企業など、多様なプレイヤーが関わります。
Q. SCの市場規模はどのくらいですか?
A. 日本ショッピングセンター協会によると、2025年のSC総売上高は33兆1,238億円で、前年比2.7%増となり、統計開始以来の最高額でした。2024年は32兆1,254億円で、前年比4.2%増でした。一方で、2025年末のSC総数は3,013で、7年連続で減少しています。
Q. SC業界の仕事にはどんなものがありますか?
A. デベロッパーや運営会社では、リーシング、開発・企画、施設運営(PM)、販促、アセットマネジメントなどがあります。テナント企業にも、出店先を探す店舗開発や、店舗運営の仕事があります。未経験でも挑戦できる職種は会社によって異なるため、募集要項で確認してください。
Q. デベロッパーとテナントは、どんな関係ですか?
A. 賃貸借契約を結ぶ貸主と借主の関係ですが、施設全体の売上を伸ばすという共通の目標を持つパートナーでもあります。契約によっては、テナントの売上に連動して賃料が変わる仕組みもあり、お互いの成功が相手の成功につながります。
SC・商業施設のご相談は株式会社ロメッツ(REMAX COMPASS)にご相談ください
株式会社ロメッツ(REMAX COMPASS)は、商業施設のリーシング支援、テナント企業の店舗開発支援、事業用不動産の仲介を手がけています。代表の向井は、デベロッパー・商業施設運営・PM/AMの実務経験を活かし、貸主・テナント双方の視点からご提案いたします。
「SCへの出店を検討している」「施設のテナント誘致を相談したい」「業界の動向を踏まえて戦略を立てたい」といったお悩みの段階でも構いません。サービス内容はこちらからご確認いただけます。具体的なご相談は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
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この記事の監修者
向井 瑛一郎(株式会社ロメッツ 代表取締役/REMAX COMPASS 代表/宅地建物取引士)
株式会社OPA、東急不動産SCマネジメント、小田急電鉄、KJRマネジメントで、商業施設のテナントリーシング・運営・アセットマネジメントに従事。東急プラザ銀座の開業や新百合ヶ丘エルミロードなど沿線商業施設のリーシングを担当した後、2022年に株式会社ロメッツを設立。貸主とテナント双方の立場を経験した視点から、店舗開発支援・商業施設のリーシング支援・事業用不動産の仲介を行っています。
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