商業施設のリーシングとは?テナント誘致の流れと会社の選び方
商業施設のリーシングとは?テナント誘致の流れと、失敗しない進め方
商業施設や商業ビルを所有・運営していると、「空区画がなかなか埋まらない」「退店が続いてフロアの魅力が落ちてきた」といった悩みに必ず向き合うことになります。こうした課題の中心にあるのが、テナントを募集し、施設にふさわしい店舗を誘致する「リーシング」です。
リーシングは、募集広告を出して問い合わせを待つだけの作業ではありません。施設のコンセプトや商圏を踏まえて入れたい業種・業態を決め、賃料条件を設計し、候補企業に直接提案して、契約から開業まで伴走する、一連の事業活動です。
本記事では、商業施設のリーシングの定義から、PM・AMとの違い、テナント誘致の具体的な流れ、賃料の考え方、うまくいかない原因、退店を防ぐ運営のポイント、リーシング会社に依頼する際の選び方までを、オーナー様・デベロッパー・PM会社のご担当者向けに整理して解説します。
執筆は、商業施設運営会社・鉄道会社・アセットマネジメント会社の現場で、リーシングやアセットマネジメントに携わってきた、株式会社ロメッツ(REMAX COMPASS)代表の向井瑛一郎の実務経験にもとづいています。
商業施設のリーシングとは
まずは、リーシングの意味と、似た言葉であるPM・AMとの違いを整理します。ここを押さえておくと、誰に何を相談すべきかが明確になります。
リーシングの定義
リーシング(Leasing)とは、賃貸可能な区画に対して入居するテナントを募集・選定し、賃貸借契約の締結までを導く業務のことです。商業施設の場合は「テナントリーシング」とも呼ばれ、単に空室を埋めるだけでなく、施設全体の業種構成(テナントミックス)を見据えて店舗を選ぶ点が、オフィスビルや住居のリーシングと大きく異なります。
商業施設は、テナント同士が互いに集客し合い、全体で施設の価値をつくる仕組みです。そのため一つひとつの区画を「誰に貸すか」が、施設の魅力と収益性の双方に影響します。
PM・AMとの違い
商業施設の運営には、リーシングのほかにPM(プロパティマネジメント)やAM(アセットマネジメント)という役割があります。役割の違いを表にまとめます。
| 役割 | 主な内容 |
|---|---|
| リーシング | テナントの募集・選定・条件交渉・契約。区画の入れ替えやフロア構成の提案も含む |
| PM(プロパティマネジメント) | 日常の施設運営。賃料等の収受、テナント対応、設備や清掃などの管理、販促やイベントの運営 |
| AM(アセットマネジメント) | 投資家・オーナーの立場で資産全体の運用方針を策定。収支計画、リニューアルや売却の判断、PMやリーシングの管理 |
AMが「資産としてどうあるべきか」を決め、PMが「日々の運営」を担い、リーシングが「誰に入ってもらうか」を担う、というイメージです。実際には三者の連携が欠かせず、リーシングの方針はAMの収支計画と、PMが持つテナントの稼働状況の双方に影響を受けます。会社によってはPMとリーシングを同一組織が担う場合もあります。
運営形態の違い(賃貸借・マスターリース・直営)
リーシングのやり方は、施設の運営形態によっても変わります。代表的なものは次の三つです。
- 賃貸借方式:オーナーが各テナントと直接、賃貸借契約を結ぶ一般的な形態。テナントの選定権がオーナー側にあり、リーシングの重要度が高い
- マスターリース方式:一括で借り上げた事業者が、各テナントに転貸する形態。オーナーの収入は安定しやすい一方、テナント選定はマスターリース事業者の方針に左右される
- 直営方式:オーナー自身が店舗を運営する形態。リーシングよりも商品・運営面の比重が大きい
どの形態でも、施設の価値を高めるうえでテナントの質が重要である点は変わりません。マスターリースの場合も、転貸先の選定方針やテナントミックスについて、オーナー側で確認しておくことをおすすめします。
テナント誘致の流れ(8つのステップ)
商業施設のテナントリーシングは、一般に次の8つのステップで進みます。案件によって順番や重なりはありますが、基本の流れを把握しておくと、どこで詰まっているのかを見極めやすくなります。なお、東京エリアでの募集の進め方については、東京・商業施設のテナント募集で失敗しない方法でも詳しく解説しています。
1. マーケット調査
最初に、商圏の人口構成、来街者の属性、競合施設の動向、周辺の賃料水準などを調べ、施設の立ち位置を確認します。数字だけでなく、現地を平日・休日、昼・夜と時間帯を変えて歩き、人の流れや競合の入りを自分の目で確かめることが重要です。
2. MD・テナントミックス計画
調査結果をもとに、施設のコンセプトと、入れたい業種・業態の構成を決めます。これがMD(マーチャンダイジング)計画であり、業種のバランスを整える設計が「テナントミックス」です。
たとえば飲食、物販、サービスの比率、ナショナルチェーンと個店の配分、ターゲット層、フロアごとのゾーニングなどを定めます。この計画が曖昧なまま募集を始めると、条件さえ合えば誰でも入れるという状態になり、施設の個性が薄れてしまいます。
3. 賃料条件の設定
区画ごとの賃料、共益費、保証金・敷金、契約期間、契約形態などの募集条件を設計します。周辺相場とテナントの採算の両方を見ながら、オーナー側の収支計画と整合させます。賃料の考え方は次の章で詳しく解説します。
4. 候補テナントのリスト化と打診
テナントミックス計画に合う企業・ブランドをリストアップし、出店意向を探ります。出店戦略は企業ごとに異なるため、エリア・面積・業態・出店形態(路面、商業施設内、ポップアップなど)の希望を踏まえて打診先を絞り込みます。
募集図面を公開して待つ方法と比べ、狙った企業に直接提案する方法は、施設のコンセプトに合う店舗を誘致しやすいのが利点です。提案資料では、商圏データだけでなく、「その企業にとってこの立地に出店する意味」を伝えることが大切です。
5. 条件交渉
関心を示した企業と、賃料、契約期間、内装工事の区分(A工事・B工事・C工事)、オープン時期、フリーレントの有無などを調整します。ここでは、貸主の希望だけを押しつけず、テナントの採算が成り立つ条件をともに探る姿勢が、長く続く関係の土台になります。
6. 出店審査
オーナー側では、テナントの財務状況、事業内容、運営体制、反社会的勢力の排除などを確認し、入居の可否を判断します。施設の信用と、他テナントへの影響を守るための手続きです。審査の基準と所要期間は、あらかじめ明確にしておくとスムーズに進みます。
7. 契約締結
合意した条件にもとづき、賃貸借契約を結びます。契約形態(普通借家か定期借家か)、中途解約の条件、原状回復の範囲、館内ルールなどを書面で明確にします。契約書は専門家の確認を経たうえで締結することをおすすめします。
8. 開業支援
契約して終わりではなく、内装工事の調整、開業日に向けたスケジュール管理、館内への告知、オープン販促の連携までが、リーシングの守備範囲です。開業後に順調なスタートを切れるかどうかで、テナントの満足度と、その後の定着が大きく変わります。
賃料の考え方(固定賃料・売上歩合・最低保証)と定期借家契約
商業施設の賃料は、オフィスビルとは異なり、テナントの売上と連動する仕組みが使われることがあります。代表的な方式を整理します。
賃料方式の種類
| 固定賃料 | 売上に関係なく、毎月一定額を支払う方式。オーナーは収入の見通しを立てやすい。テナントは売上が伸びなくても固定費を負担する |
|---|---|
| 売上歩合賃料 | テナントの売上に一定の料率を掛けて賃料とする方式。売上に応じて賃料が変動し、オーナーとテナントが成果を分かち合う |
| 最低保証付き歩合賃料 | 歩合賃料に最低保証額を設ける方式。売上が低調でもオーナーは一定の賃料を確保でき、売上が伸びれば歩合分が上乗せされる |
どの方式が適しているかは、施設の業態、テナントの業種、オーナーの収支計画によって異なります。たとえば売上の変動が大きい業態や、新規出店でまだ売上の見通しが立ちにくい企業には、歩合を含む方式が受け入れられやすい場合があります。一方、オーナー側がローンの返済計画を重視する場合は、固定部分の比率を高める判断もあります。
なお、歩合賃料を採用する場合は、売上の報告方法や確認の仕組み(売上管理の方法、報告の頻度、確認の権利)を契約書で定めておく必要があります。
定期借家契約という選択肢
契約形態には、普通借家契約と定期借家契約があります。普通借家契約は、期間満了後も、貸主に正当な事由がなければ更新を拒めないのが原則です。これに対し、定期借家契約は、契約で定めた期間の満了により契約が終了し、更新がない形態です(再契約は双方の合意で行います)。
商業施設では、テナントの入れ替えやリニューアル、フロア再編を計画的に進めやすくするため、定期借家契約が活用される場面があります。ただし、定期借家契約には、書面による契約や、契約前の説明書面の交付、期間が1年以上の場合の終了通知など、法律で定められた手続きがあります。手続きに不備があると、定期借家として認められないおそれがあるため、実際の運用にあたっては弁護士などの専門家に確認してください。
また、定期借家だからといって、テナントの出店意欲が下がらないよう、期間設定や再契約の考え方を丁寧に説明することが大切です。内装投資の回収期間を考慮した契約期間にすることが、よい条件でのリーシングにつながります。
リーシングがうまくいかない主な原因
空区画が長引くとき、原因は「立地が悪いから」とは限りません。現場でよく見られる原因を、整理してみます。
募集条件が市場とずれている
周辺の賃料相場や、テナントの採算を十分に反映せず、過去の条件のまま募集してしまうケースです。条件が高すぎれば、そもそも検討の俎上に載りません。募集条件は、定期的に見直す必要があります。
コンセプトとテナントミックスが決まっていない
どんな施設にしたいかが曖昧だと、問い合わせのあった企業に場当たり的に貸すことになり、施設の個性が失われます。結果として、集客力が弱まり、既存テナントの売上にも悪影響が及ぶことがあります。
待ちの募集に偏っている
不動産ポータルや看板での募集だけに頼ると、出会えるのは「たまたま探している企業」に限られます。出店意向のある企業に直接アプローチするプロアクティブな営業が不足していると、候補が集まりません。
区画の仕様がテナントの使い方に合っていない
面積、天井高、間口、設備容量、排気・給排水、搬入動線などが、想定する業態に合わないケースです。特に飲食では、ダクトや厨房設備のインフラが整っているかどうかが、検討の可否を分けます。必要に応じて、区画の仕様を見直す判断も欠かせません。
判断の遅さと、窓口が一本化されていない
テナント側は、複数の物件を並行して比較しています。回答や審査に時間がかかると、他の物件に決まってしまいます。社内の意思決定の流れと、窓口の体制を整えることが、成約率を左右します。
退店(テナント離脱)を防ぐ運営のポイント
リーシングは、新しいテナントを入れることだけではありません。いったん入居したテナントに長く営業してもらうことが、空室対策の最も確実な方法でもあります。退店が続くと、新たなリーシングのコストと空白期間が発生し、施設全体の印象にも響くからです。
テナントの売上と課題を把握する
売上の推移、客層、スタッフの状況などを定期的に確認し、売上が落ち込む前に兆候をつかみます。担当者がテナントの店舗を訪れ、現場の声を聞く習慣が、早期の対応につながります。
施設全体の販促と、テナントの孤立を防ぐ取り組み
集客施策やイベントは、施設として行うからこそ効果が高まります。テナントが「この施設に出店していてよかった」と実感できるよう、販促の方針や効果を共有し、必要に応じて個店の販促も支援します。
契約更新・リニューアル時期を見据えた対話
契約満了の前から、更新の意向や条件を話し合う機会をつくります。退店の意向が分かってから動くのでは遅く、次のテナント候補を並行して検討する時間も必要です。リニューアルの計画がある場合は、その方向性を早めに伝えることで、テナントも投資判断がしやすくなります。
定期的なテナントミックスの見直し
商圏や消費の動向は変化します。数年前に最適だった構成が、今も最適とは限りません。売上や集客の状況をもとに、区画の入れ替えやゾーニングの再編を計画的に進めることが、施設の鮮度を保ちます。この点で、日常の運営(PM)と、リーシングの連携が重要になります。
リーシング会社に依頼するメリットと選び方
リーシングを自社だけで進めるのが難しい場合、専門のリーシング会社に依頼する方法があります。ここでは、メリットと、会社選びで確認したいポイントをまとめます。
リーシング会社に依頼するメリット
- 出店意欲のある企業へのネットワークがあり、募集図面を出すだけでは出会えない候補に提案できる
- 市場の賃料水準や、他施設の動向を踏まえた客観的な条件設定の助言を受けられる
- 条件交渉や審査の調整を代行してもらえ、社内の負担を減らせる
- テナントミックスの考え方にもとづいた、施設全体の視点でのMD提案を得られる
リーシング会社の選び方
会社を選ぶときは、次の観点で比較すると判断しやすくなります。
- 実績の内容:類似する規模・業態・エリアの施設での経験があるか。担当者本人が実務を担ってきたか
- テナント側のネットワーク:どのような業種・企業と日常的に接点があるか
- 提案の姿勢:オーナーの要望を聞くだけでなく、市場から見た課題や、条件見直しの提案をしてくれるか
- 報酬体系:成約報酬の考え方、独占か非独占か、契約期間などが明確か
- コミュニケーション:進捗の報告頻度や、情報の共有方法が合うか
- 貸主・テナント双方の視点:貸主に偏りすぎず、テナントの採算や事情を理解した条件調整ができるか
どのような会社に依頼する場合も、最初から一社に絞り込む必要はありません。まず現状の課題を相談し、提案内容や対応の質を見たうえで、依頼範囲を決めるのが現実的です。
貸主・テナント双方の視点で進めるリーシング
リーシングで条件がまとまるのは、貸主とテナントのどちらか一方が有利になるときではなく、双方が「この条件なら続けられる」と納得できるときです。ロメッツの代表・向井瑛一郎は、貸主側とテナント側の両方の立場を、実務で経験してきました。
デベロッパー・運営・AMの現場で培った視点
向井は、2008年に株式会社OPAでテナントリーシングやPM受託営業、河原町OPAの運営に携わりました。その後、東急不動産SCマネジメントで東急プラザ銀座の開業や、表参道原宿・蒲田のリニューアルに関わるリーシングを担当し、小田急電鉄では新百合ヶ丘エルミロードをはじめ、沿線商業施設のリーシングに従事しました。
さらに、KJRマネジメントでは、日本都市ファンド保有物件のアセットマネジメントを経験しています。施設を運営する側、投資家・オーナーの収益を考える側の両方から、リーシングを見てきた経歴です。
独立後は、小田急マルシェ六会日大前やカレッタ汐留などのテナントリーシングにも携わっています。
テナント側の出店支援も行うから見える現実
ロメッツは、オーナー向けのリーシング支援に加えて、テナント企業の店舗開発や出店支援も行っています。日々、出店する側の事情に触れているため、「どのような条件・提案であれば企業が出店を決めるのか」を、具体的に理解したうえで貸主に助言できるのが強みです。
貸主の収支計画と、テナントの採算の双方を見ながら、無理のない条件を探る。その積み重ねが、結果として長く続くテナント関係と、安定した施設運営につながると考えています。
よくある質問
Q. リーシングとPM(プロパティマネジメント)は何が違いますか?
A. リーシングは、テナントの募集・選定・契約までを担う業務です。PMは、契約後の日常的な施設運営や、賃料の収受、テナント対応、設備管理などを担います。両者は連携が必要で、同じ会社が担うこともありますが、役割としては別のものです。
Q. 空区画が長期化している場合、まず何を見直すべきですか?
A. 最初に確認したいのは、募集条件(賃料・契約条件)が市場と合っているか、区画の仕様が想定する業態に合っているか、募集の方法が待ちの姿勢に偏っていないか、の三点です。そのうえで、施設のコンセプトとテナントミックスの方針を、改めて整理することをおすすめします。
Q. 定期借家契約は、必ず採用したほうがよいのでしょうか?
A. 必ずしもそうとは限りません。入れ替えや再編を計画的に進めたい場合には有効ですが、テナントの内装投資の回収期間や出店意欲に影響する場合もあります。施設の方針と、テナントとの関係を踏まえて判断してください。法律上の手続きがあるため、実際の運用は専門家への確認が必要です。
Q. リーシング会社への相談は、どの段階で行えばよいですか?
A. 空区画が生じる前、あるいは退店の意向が分かった段階で早めにご相談いただくと、選択肢が広がります。リニューアルや新規開発の計画段階から、テナントミックスやゾーニングについて相談することも可能です。まずは現状をお聞かせください。
商業施設のリーシングは株式会社ロメッツ(REMAX COMPASS)にご相談ください
株式会社ロメッツ(REMAX COMPASS)は、商業施設のリーシング支援、テナント企業の店舗開発支援、事業用不動産の仲介を手がけています。代表の向井は、デベロッパー・商業施設運営・PM/AMの実務経験を活かし、貸主・テナント双方の視点から、施設ごとの課題に合わせたご提案をいたします。
「空区画をどう埋めればよいか」「テナントミックスを見直したい」「退店が続いている」など、現状のお悩みの段階でも構いません。サービス内容はこちらからご確認いただけます。具体的なご相談は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
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この記事の監修者
向井 瑛一郎(株式会社ロメッツ 代表取締役/REMAX COMPASS 代表/宅地建物取引士)
株式会社OPA、東急不動産SCマネジメント、小田急電鉄、KJRマネジメントで、商業施設のテナントリーシング・運営・アセットマネジメントに従事。東急プラザ銀座の開業や新百合ヶ丘エルミロードなど沿線商業施設のリーシングを担当した後、2022年に株式会社ロメッツを設立。貸主とテナント双方の立場を経験した視点から、店舗開発支援・商業施設のリーシング支援・事業用不動産の仲介を行っています。
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商業施設のリーシングは株式会社ロメッツ
| 社名 | 株式会社ロメッツ |
|---|---|
| 所在地 | 〒101-0061 東京都千代田区神田三崎町三丁目4番9号 横山ビル3F |
| TEL | 03-6261-5098 |
| 営業時間 | 9:30 – 18:00 |
| 定休日 | 土日・祝日 |
| 許認可番号 | 宅地建物取引業 東京都知事(1)第110605号 |
| URL | https://lomets-inc.com |